医療系開業

「分院の作り方」と行政手続きは?分院展開という経営戦略を解説

昨今、「分院展開」に対して医師、歯科医師を始めとした、開業医の先生方の関心が高まっているようです。

ではなぜ今、分院展開が注目されるのでしょうか。

これまでの開業すれば儲かるというブルーオーシャンから競争激化時代の到来、行政による医療費抑制といった将来リスクなど、医療経営環境の変化があり、成長戦略のひとつとして、分院展開をお考えの先生方が増えています。

そこで、分院を作る方法と、そのメリットなどを、ここではご紹介したいと思います。

分院展開のメリット

分院展開のメリットについて考えてみたいと思います。

分院展開は、基本的には美味しいとは言われていますが、そのメリット・デメリットを踏まえておきましょう。

拠点が増えることで売上自体が増加

まずは、拠点が増えることで売上自体を増加させることができます。

そして、分院の運営をうまく行うことができれば、利益を増やし、所得も増加させることが可能でしょう。

新規開業では経営を軌道に乗せるまでが大変ですが、分院展開ではスタッフの管理や集患など、すでに本院の運営で培った成功ノウハウがあります。

それをダイレクトに分院に活用することで省力化も可能となります。

スケールメリットがある

また、分院展開を行うことにより、スケールメリットを出すこともできるようになります。

このスケールメリットは医薬品や消耗品、検査費用がディスカウントできることはもちろんですが、スケールメリットとして一番大きいのは人材確保についてです。

人材不足の現在において人材確保は非常に重要な経営課題ですが、一度の広告で複数のクリニックの採用活動が行えたり、退職の申し出があった場合でも別の分院に異動させたりするなど、人材のロスを低減させることが可能となります。

マネジメントの仕事ができる

分院を経営することによって、まずは、理事長自身も、マネジメントという仕事を通して「社長の喜び」的なやりがいを感じることができるでしょう。

開業医は孤独です。

ですが、分院長などの仲間、チームができることで、孤独感や閉塞感から解放されますし、優秀な分院長などが入ることで新たな臨床知識の獲得や、スキルアップにつながる利点もあります。

分院展開のデメリット

では、分院展開のデメリットはどうでしょうか。

デメリットについても知っておく必要がありますよね。

経営がうまくいかないリスクも

当然ですが、分院の経営がうまくいかないというリスクが常に存在しています。

分院長に対する患者さんの評判が良くない場合には赤字になってしまいますし、本院でせっかく稼いでも分院の赤字を補填しなければならず、意味がなくなってしまいます。

人材の退職リスク

また、分院長が急に退職してしまうというリスクもあります。

この場合、次の分院長が見つかるまでは診療ができないので売上はなくなりますが、売上がなくても賃料などの経費は支払わなければなりません。

そして、後任の分院長を見つけられずやむなく閉院ということになれば、内装や医療機器などへのこれまでの投資は回収不能になってしまいます。

理事長という任務へのストレス

さらに、理事長にかかるストレスもデメリットといえるかもしれません。

分院展開の初期は、理事長はプレイングマネージャーであることが多いと思います。

最初のうちは、日中は診療を行い、診療終了後にようやくマネジメント業務を行う時間が取れますので、拘束時間は開業医時代に比べて当然長くなります。

他人に任せて、上手くいくこともあれば、他人に任せるとなかなか自分の思い通りにいかず、ストレスが溜まることもあります。

分院展開で前提として必要なこと(医療法人化)

分院展開として、まず必要なことを見ていきたいと思います。

まずは、具体的な手続きに先立ち、まずは前提として医療法人であることが必要です。

個人診療所は院長(管理医師)の個人事業であり、個人の確定申告を提出します。

この個人事業主の形態では、分院は作ることはできず、例えば名称などで関連を持たせたとしてもそれはそれぞれの管理医師が事業主となり、確定申告を行う、別の事業となります。

つきまして、分院展開の第一歩は法人化であり、個人クリニック院長の自院を法人化するか、医療法人毎にM&Aをするなどが求められます。

分院展開の行政手続きのポイント

分院をつくるためには、各行政(都道府県、法務局、保健所、厚生局など)が指定する、必要な手続きの書類作成と提出が必要です。

そして、各種手続きによって書式と提出期限が定められています。

期限を過ぎてしまうと翌月の申請に持ち越しとなるため、事前に期日を確認し計画的に準備を行いましょう。

具体的な手続きとスケジュール

次に、医療法人化まで終えた医療法人が分院を作る際の流れについて記載をします。

① 事前相談(都道府県、保健所など)

分院の設立は定款変更事項です。

期日内に、スムーズに定款の記載内容を変更し、都道府県の認可を得るために、定款変更認可については都道府県の担当窓口に事前相談が必要です。

都道府県によっては、仮申請(②で解説)を事前相談としているところもあります。

また、そもそも対面での事前相談を受けていない自治体もありますので、事前に電話で確認をするのが良いでしょう。

開設者が相談に行くのも良いですが、医療法人の定款変更に精通している行政書士に依頼をしてしまうのがスムーズです。

また、分院設立の定款変更では開業するクリニックの賃貸借契約書、平面図、名称などを提出する必要がありますが、定款変更認可後に保健所から不可と言われないように、定款変更の提出前に保健所にも確認に行く必要があります。

② 都道府県担当窓口への医療法人の定款変更認可の手続き

都道府県のウェブページには、定款変更の流れについて細かく記載がありますので、手続きを行いましょう。

都道府県の定款変更認可の期間は、必要書類の提出から約3ヶ月程度かかります。

事前相談や書類作成期間を含めると、数ヶ月程度の期間を見込んでおくと良いでしょう。

やり取りは、事前審査(仮申請という自治体もあります)で各書類を捺印しない状態で提出して、修正点がメールなどで返信されますので、そこを修正するなどをして、事前審査の認可後に捺印した本申請を提出します。

この辺りも自治体に寄ってルールが異なりますので注意が必要です。

③ 法務局へ法人変更登記申請の手続き

定款変更の認可がおりたら、法務局へ登記をします。

こちらの期間は1週間~10日ほどです。

登記完了後の登記簿謄本をこの後の保健所の開設許可申請書に添付します。

登記を申請した際にもらえる受領証で先に申請の相談に乗ってくださる保健所もあります。

原則は手続きが完了した登記簿謄本が必要になりますが、本当に急いでいる際などは相談をしてみてください。

④ 保健所へ分院開設の手続き(例 東京都の場合)

定款変更の認可がおり、登記が完了したら次は保健所です。

保健所は都道府県単位ではなく、市町村単位で管轄の保健所が決まっております。

保健所の手続きが済めば、その時点で自費診療が実施可能となります。

具体的な流れは以下となります。

  1. 事前相談:開設スケジュール(見込み)、平面図、賃貸借契約書、提出書類等を相談
  2. 開設許可申請書提出:東京都内の保健所の標準事務処理期間は15日(土日祝を除く営業日ベース)
  3. 書類審査・実査:保健所の担当者による実地調査
  4. 開設許可書交付:開設許可申請書の副本は、許可書交付時に一緒に交付される
  5. 開設届:開設後10日以内に届出。(エックス線装置を設置する場合は、別途診療用エックス線装置備付届を届出)

このような、標準的な流れでして、この後の厚生局の締め切りなども踏まえて、保健所への早めの相談が重要となります。

⑤ 厚生局への保険医療機関指定申請等の手続き

次に厚生局です。ここでは保険医療機関指定申請の手続きを行います。

よって厚生局に期日通り提出をすれば、翌月月初から保険診療が可能となります。

この期日を確認して、間に合うように逆算して行政手続きを進めるのがポイントです。

既に開業している診療所を医療法人の分院にする場合は、保険診療ができない空白期間が生じないようにするため、指定期日を遡及して指定を受けることが可能です。

厚生局に手続きをすると、その月末から翌月月初には保険医療機関番号が届きます。

また、翌月月初に施設基準の締め切りがあるので注意が必要です。

⑥ その他の所管官庁への各種届出、申請の手続き

必要に応じて、生活保護法や被爆者援護法、結核予防法、労災保険法などによる指定医療機関の指定申請を行います。

まとめ

今回は、分院を作るための一般的な診療所で保険診療を行う場合の手続きについてご紹介しました。

また、メリットや、デメリットもここでは紹介しました。

そして、基本的には、具体的な必要書類は管轄行政機関ごとに指定されているため、都度確認し対応する必要があります。

医療法人が分院診療所を開設するには、医療法人設立時と同様に多くの手続きを経る必要があり、通常数ヶ月を要すことから、スケジュールには余裕をもって計画的に進めることが重要です。

ぜひ参考にしてみてください。